町家という素材

京都・西陣の路地奥。凛とした町家が、住まいにも仕事にも、整える余地をたっぷり残して待っています。

細い路地を少し進むと、空気がゆるやかに変わっていくのがわかります。連棟に挟まれた一角に、格子戸と瓦屋根を備えた一軒の町家が静かに建っています。まっすぐに立ち、「ここでずっと見守ってきたんだ」とでも言いたげなその佇まいに、思わず足が止まりました。

場所は上京区寺今町、西陣の真ん中あたり。今出川大宮を少し下がったところにあり、暮らしの便利さを保ちつつも、どこか時間がゆったり流れるような感覚があります。近くには昔ながらの商店やスーパー、小さなカフェなども点在していて、日常の中に自然と京都らしさが混ざり合うエリアです。

建物は2階建ての4K。外観は整っていて堂々とした印象ですが、室内には「このまま住む」というより「どう整えるか」を考える余地がたっぷり。建具や内装には年季が感じられ、水回りも含めて大きく手を加える必要があります。浴室はありますが使用は難しく、トイレも含めて一式やり直しが前提。「さあ住もう！」という軽やかさはありませんが、「どう料理してやろうか」と腕が鳴る人にとっては、むしろたまらない素材かもしれません。

もうひとつ注目したいのが、この物件が準工業地域にあるという点。住居としてはもちろん、店舗やアトリエ、工房など、多様な用途に対応できるエリアです。町家で何かを始めたい人にとって、この立地は大きな魅力となるはず。西陣らしさを活かした小商いや、住みながらの製作活動、隠れ家的な拠点づくりにも向いているでしょう。

さらに、この物件は「京町家プロフィール」取得済。地銀であれば住宅ローンも少し通りやすくなるかもしれません。町家を守りながら住み継ぎたいという人にとって、背中を押してくれる制度があるのは心強いポイントです。

町家らしさが詰まった、まっすぐな一軒。その佇まいは、手をかけるほどに住み手の色がにじみ出てくるはず。暮らしにも仕事にも、しっかりと応えてくれる頼もしい町家です。