立地と眺めのせめぎ合い

東山が望めて、閑静な住宅地が広がる左京区は浄土寺・黒谷エリア。その中でも大文字の眺望が得られる場所を見つけました。
比較的密集した住宅地の中にありながら、東以外の三方を緑に囲まれ東は隣家越しではありますが、大文字を望める眺望。ほぼ住宅で占められてしまっている京都市内に於いてはなかなかな出物と言えましょう。

地図で見てみるとその立地の特徴がよくわかります。真如堂のすぐ傍、萩で有名な迎稱寺というお寺さんの庭（と墓地）に突き出すように建物は立っています。よって、古い大木に囲まれ借景は抜群（しかし足元には墓地も点在）で、前面道路から一段高いところに建物が建っているので視界の抜けも意外と良いのが嬉しいですね。

建物を見ていきましょう。平入の木造2階建て。中央から入って両翼に個室が配置されている分かりやすいプランです。改装の際もこれをベースに考えることになるでしょう。玄関部分が一番東面にひらけているので、思い切って吹き抜けにして、めいいっぱい光を取り込む形にしても気持ちよさそうです。1階は南側にちょっとした庭があるのですが、お寺さんの墓地も点在しているため、高めのブロック塀でしっかり目線は隠されています。2階は樹冠しか見えないため、二階西側を新たに窓開けて景色として取り込んでも気持ちよさそうですね。
道路に面しているところは車が置ける仕様。軽やかなアーチ形の波板屋根が付いているので雨もそこまで気にならないですね。ガタがきているのでこちらも手直しの必要はありそう。　ただ、道から見て、アーチの屋根越しに階段があり、そして玄関が見えるという景色は何だか遊園地のアトラクションの待合の様でちょっとときめいてしまいますね。ここは顔になるのでかわいく改装してしまいましょう！

ざっと建物と周辺を見て気になったのは、やはり湿気。大きく見れば吉田山と黒谷さんにまたがる斜面地に位置してるので、湿気はしっかりありそう。3方気に囲まれているというメリットは裏を返すとそれだけ湿気や虫の心配があるということですね。あとは、建物までに至る階段のところの敷地が細いために再建築不可となっておりますのでそこを考慮の上改装が必要となります。何カ所か雨漏りの形跡も見られたので修繕は必須かと思われます。最後に3方森に囲まれてと何度も強調させていただきましたが木々とセットで3方墓地も点在しているのが確認できます。お寺さんの敷地なので当然なことではありますが。。。

いいところと気になるところのせめぎ合い。この場所での妄想が膨らみぐらっと傾かれた方は是非。